きのこで楽しむ秋の食卓~調理法とレシピ~【料理/食文化研究家コラム】

秋といえば、きのこ――。秋刀魚に秋鮭、ナスにレンコン、芋類、季節の果物など、美味しいものには何かと事欠かない秋ですが、なかでも食感と香り、旨みがきわ立つきのこ類は体にもやさしく、日本人に古くから親しまれている大切な旬の味わいです。

実は、日本で一般に売られているきのこの種類は海外の国々と比べてもかなり多く、今では年間を通じて比較的安定した価格で買い求めることのできる有り難い食材です。

ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、低カロリー。それでいて旨みが強く、形や味や食感にさまざまなバリエーションがあるきのこ。

食卓に上手に取り入れていくことで、毎日のお料理を見た目からも味わいからも満足感のあるものにしてくれます。
今回のコラムでは秋の味覚・きのこの中から、「シイタケ・マッシュルーム」「しめじ」「エノキタケ」「エリンギ」を取り上げ、調理方法やおすすめレシピをご紹介します。

1.シイタケ、マッシュルーム

私たち日本人になじみのあるキノコの中でも、旨み成分グルタミン酸の含有量が多いことで知られているのが、この「シイタケ」と「マッシュルーム」です。一見すると、シイタケは和風の、マッシュルームは洋風のお料理に合うように思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。どちらも意外にクセがなく、しかも旨みが強いので、どちらかがない時は互いに代用ができるほど使いやすいきのこです。

シメジなどに比べると大ぶりで存在感があるので、そのままステーキにしたり、大きめに切って料理のメイン具材にしたりしても美味しいですよね。また旨みが強く、水分が多いので、細かくきざんで肉だねのかさ増しに使えば仕上がりがふんわりジューシー、且つ満足感いっぱいになります。
またマッシュルームの場合、新鮮なものは生でもスライスして美味しくいただけるのもポイント。ホワイトマッシュルームを薄く切ってのせたサラダは、欧米でも定番の食べ方です。ちなみにサラダに向くホワイトに比べ、旨みの強いブラウンはどちらかというと煮込み料理向き。用途に応じて使い分けてみましょう。

他のキノコと同様、この2つはスープに加えてももちろん美味しいキノコですが、特に干し椎茸は、その戻し汁まで余すところなく使うことができ、生のキノコでは出せない複雑な味わいを発揮してくれます。こちらも日本料理だけでなくエスニックや洋風料理などさまざまなテイストに合わせることができるので、ぜひさまざまなお料理に使ってみてくださいね。

干し椎茸出汁が決め手!おうちで台湾風牛肉麺
鶏むね肉と肉厚しいたけのソテー
2.しめじ

ひと口に「シメジ」といっても、実はスーパーなどに並ぶおなじみの「ブナシメジ」や、昔ながらのいわゆる「ヒラタケシメジ」(※本来はシメジではなくヒラタケを栽培したもの)、味や食感の良さが魅力の「ハタケシメジ」など、いろいろな種類があります。

現在最も市場に多く出回り、店頭でよく見かけられるブナシメジは、コロンとした丸い形の傘とシャッキリした軸の部分のバランスが美味しい使いやすいきのこです。逆に、昔よく食卓で見かけた「ヒラタケシメジ」という名のきのこは、本来シメジの仲間ではなくヒラタケを瓶に入れて栽培していたものですが、旨みが強く、味噌汁にした時の出汁が美味しいのでむしろ懐かしいという方もいらっしゃるかもしれません。

いずれも、小ぶりでも食感に独特の小気味良さがあって美味しいシメジ。小房に分けられるので少量からでも使いやすく、旨みもあるのでこちらもさまざまなお料理に気軽に加えることができます。

また、大黒シメジや丹波シメジなどの名称で知られるハタケシメジは、「香りマツタケ、味シメジ」という言葉で知られる天然のホンシメジの味わいに近づけて菌床材倍ができるよう改良したもの。大きさや見た目の立派さもさることながら、食感も良く、噛むほどに旨みが広がる美味しさで、そのままでも十分メインになるほどの食べごたえがあります。

豆と根菜の具だくさんおかずスープ
きのこソースのスコップハンバーグ
かぶときのこのサブジ(スパイス炒め)
3.エノキタケ

煮て良し、焼いて良し、揚げて良しの「エノキタケ」は、ご存じの通り、見た目は細身でも旨みが強くて食感も良く、料理の影の主役になるほど便利なきのこです。

ひき肉と混ぜ合わせてふんわりした食感のつくねやハンバーグ、餃子、焼売などを作るのもいいですし、汁ものに加えれば、それはもうたまらなく美味しい出汁がとれます。煮込んでも食感が残るため、料理のかさ増しや食べ過ぎ防止にも大活躍。電子レンジにかければ短時間でささっと火が通るので、自家製のなめたけや塩麹きのこなど、腸活に良い常備菜が簡単に作れます。

キノコの中では比較的傷みの早いエノキタケですが、すぐに使わない時は刻んで冷凍保存しておいたり、天日干しにして乾燥させておくと、旨みも味わいも栄養価も増し増しに。スープや炊き込みご飯などに手軽に利用できます。

たっぷりきのこと焼きねぎの欧風味噌汁
鶏ささみと小松菜の納豆和風パスタ
4.エリンギ

噛みごたえのあるコリコリした食感が楽しい「エリンギ」は、1993年に初めて国内で人工栽培がされた、日本では比較的新しいキノコです。もともとヨーロッパなどで人気のあったキノコで、今でも海外では日本でよりはるかに高い値段で取り引きのされている所が多くあります。つまりそんな美味しいエリンギを手頃な値段でたくさんいただける日本は、実はとても有り難い環境。ぜひいろいろなお料理に使っていきたいですよね。

エリンギの魅力は、なんといってもその存在感のあるしっかりとした歯ざわり。それでいて意外とクセがないので、和洋中と、やはりさまざまな料理に使うことができます。

特におすすめなのは、季節の食材と合わせた、素材そのものの美味しさを楽しむような食べ方。他の食材を邪魔するような強い香りがないので使いやすく、メインを引き立てる上手な脇役になってくれます。

あるいは逆に、ふんわり衣をつけたフリッターなど、エリンギ独特のコリコリ感やジューシーさを楽しめるような主役のポジションもお手のもの。バターのようなこっくりまろやかなテイストにも合いますし、オリーブオイルのような、素材を活かすキリリとした味わいにもぴったりマッチします。エリンギはまさに、その時々のニーズにしっかり応えてくれる万能キノコなのです。

牛焼き肉と季節野菜の吹き寄せ風♪柚子胡椒たれ
鶏スペアリブと秋野菜の蒸し焼き♪バルサミコソース

そのほかにも、日本のキノコの王様・「マツタケ」や、独特の風味と食感が他に類のない「マイタケ」、「ナメコ」、「キクラゲ」など、定番のキノコはたくさんあります。
それに加え、近年では少し珍しい「ヤマブシタケ」や「キヌガサタケ」、ヨーロッパで人気の「アンズタケ」や「ポルチーニ」、「トリュフ」など、さまざまなキノコに注目が集まり、日本でも生や乾燥など、入手の機会が増えています。また、森の珊瑚のような自然界では珍しい「ハナビラタケ」も栽培に成功し、今後食卓に広がっていくと食生活が豊かになるかと思います。

ハナビラタケ

それぞれに味わいが異なり、個性的な見た目も楽しめるキノコ。今でも季節を問わずにいただけるものも多くなりましたが、やはり秋は旬の食材とも合わせやすく特にキノコが美味しく感じられる時季です。ぜひ皆さんも、今年はキノコをたくさん召し上がって、素敵な秋の日をお過ごしください!

料理/食文化研究家・庭乃桃さん

料理/食文化研究家・庭乃桃さんMeal Partner_Food Culture Researcher

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大学院でヨーロッパ地域の歴史・文化を専攻し、現地へ留学。
企業向けレシピの開発やスタイリング・撮影を手がけるほか、書籍・コラムの執筆や、翻訳、講演など多方面で活動中。

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