過剰な高タンパク質食によるシミ発生や腎臓への負担を緩和する食物繊維

三大栄養素である糖質、タンパク質、脂質の適正な摂取の目安にはさまざまな考え方がありますが、日本人の食事ではそれぞれのカロリー比率で糖質が6割タンパク質が2割脂質が2割を理想としてきました。

最適なカロリー比率:糖質6割タンパク質2割脂質2割

しかし近年では、高タンパク質で低糖質な食事の摂取が、糖尿病/肥満の人や高齢者に勧められる場合があります。

また多くのアスリートは高タンパクである鶏の胸肉を摂取したり、【プロテイン】と称して積極的にタンパク質の摂取がトレンド化してきています。

2割以上に脂質過剰にした高脂肪食が健康に与える影響についてはよく研究されており、要は「太ってしまいます」ということで肥満や種々の疾病との関連が研究されてきました。

それに対して、タンパク食の過剰摂取が体に及ぼす負の影響についてはあまり知られていませんでした。
このコラムでは比較的に新しい報告からの知見として、タンパク質の過剰摂取に関する研究内容と高タンパク質食による負の影響を抑える食物繊維のチカラを紹介いたします。

 過剰なタンパク質摂取によるチロシン由来のシミ発生や腎臓への負担

摂取された過剰なタンパク質は、腸内細菌によって代謝(分解)されアミノ酸を経て、その一部はフェノール類やクレゾールのような尿毒素へ変換されます。つまり、タンパク質を過剰に摂取しますと、尿毒素が過剰に産出された結果、腎臓や肝臓への負担が大きくなることが懸念されます

また、美肌やシミ対策に興味がある人は“メラニン”は望ましいものではないとご存じだと思いますが、メラニンはフェノール類からつくられ、フェノール類のもと(前駆体)はアミノ酸のひとつであるチロシンであることが知られています。
食材のアミノ酸構成比にもよりますが過剰なタンパク質摂取は多くのチロシンを体内に入れることを意味しています。フェノール類は強い細胞毒性を示すことから、短期では皮膚のターンオーバーに対して悪影響を与え肌荒れやシミの原因になり、長期では細胞内皮に障害を引き起こし心血管障害や慢性腎症へと発展することが危惧されます。

過剰なタンパク質の摂取⇒体内のチロシン増加⇒フェノール類によるメラニン生成
【短期】皮膚の肌荒れやシミの原因に
【長期】皮膚内皮の障害による心血管障害や慢性腎症への発展

 食物繊維摂取の実験結果

近年、話題になったり注目されている【腸活】の具体的な対応として、ヒトのもつ酵素で消化されない食物繊維の摂取があります。

糖がα-グリコシド結合している食物繊維を摂取すると、大腸内のフェノール類やクレゾールが減少することが報告されています(※1)。

私たちは、α-グリコシド結合のみから構成される食物繊維(実際の素材としてイソマルトデキストリン)をラットに投与した実験を行いました。

その結果、予想どおり高チロシン食を食べたラットは生体中のフェノール類とクレゾール濃度が増加しました。そして、食物繊維を同時に摂取したラットでは高チロシン食群に比べてフェノール類とクレゾール濃度は有意に低下していました。

高チロシン(高タンパク質)摂取⇒フェノール類とクレゾール濃度≪増加≫
食物繊維同時摂取⇒フェノール類とクレゾール濃度≪有意低下≫

 食物繊維摂取による腸内フローラの改善・シミ対策

腸内フローラ解析を行った結果、食物繊維を摂取したラットでは腸内フローラの組成比が変化することで短鎖脂肪酸をつくるバクテロイデス属やビフィズス菌などの有用菌が増えていました(※2)。

しかし、高タンパク質を摂取したラットではビフィズス菌を主に含むアクチノバクテリア門(Actinobacteria)は検出限界以下まで低下していました。

また食物繊維を摂取したラットの消化管では有機酸含量が高くなることに起因してpHが低下していました。

フェノール類やクレゾールの産生が抑えられる知見を明らかにできましたので、腸内フローラの改善でシミ対策ができるのではないかという考えにつながります。

 食物繊維摂取による美容面の効果と健康寿命の延伸

なぜ、食物繊維の摂取によりフェノール類の産生が抑えられるのかそのメカニズムに興味がある方もいらっしゃいましょう。私どもは、次のように考察しています。

食物繊維は腸内細菌のもつ酵素で分解されると細菌に利用可能な糖になります。腸内細菌にとってエネルギー獲得の優先順位から糖はチロシンなどのアミノ酸より優先的に利用されるので、糖代謝がアミノ酸の代謝と競合することで阻害が起きた結果、フェノールの産生が抑えられた推察しました。

高タンパク質を摂取したラットでは、腎臓や皮膚性状にその作用が及んだこと、またそのラットが食物繊維の摂取で腸内細菌叢が変化したことから糞便および血清のメタボローム解析(代謝産物の網羅的な解析)を実施しました。
その結果、消化管内の代謝産物に違いが生じており、この代謝産物の違いは腸内フローラの変化によるものと推察されました。また興味深いことに、高タンパク質食と併せて食物繊維を摂取したラットでは、γ-アミノ酪酸やスペルミジンといった健康寿命に関与するアミノ酸代謝産物の有意な産生増加が認められました。

以上、過剰にタンパク質を食したことでアミノ酸代謝を介してフェノール類などの炎症性物質は多くなりますが、食物繊維の摂取でその産生量が抑えられました。高タンパク質食による高アミノ酸過剰供給環境においては腸内フローラの細菌組成を変化させ、大腸での代謝産物に影響を与えていました。

高タンパク質食を摂取しても食物繊維を一緒に摂ってますと、高タンパク質食による負の影響を抑え、シミ対策などの美容面だけではなく健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆されました。


参考文献
※1:Chen et al, Biosci Biotechnol Biochem 2016.
※2:Takagaki, Morita et al. Biosci Biotechnol Biochem 2020.


<このコラムの執筆者> 岡山大学学術研究院環境生命科学学域 森田 英利 教授 

1991年岡山大大学院自然科学研究科博士課程修了。米国ミネソタ州立大 Food Science and Nutrition学部博士研究員、麻布大獣医学部教授を経て、2015年より 岡山大大学院環境生命科学研究科教授。

専門分野・研究テーマ:食品機能学,微生物ゲノム学、ヒトの細菌叢解析と腸内細菌・ビフィズス菌の比較ゲノミクス、乳酸菌のタンパク質代謝に関する研究、奄美群島の百寿者の腸内環境分析 等

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