近年、強い痩せ願望によるストイックなダイエットや様々なストレス環境により、摂食障害の患者さんは増加傾向にあります。本コラムでは、摂食障害の一つである極端に食事を制限するタイプの『拒食症』の原因や克服方法についてご紹介させていただきます。
拒食症とは
様々な要因が複雑に組み合わさっているケースも多くあります。
【 極端に食事を制限するタイプ 】
痩せることでの達成感や痩せていることで自信となり、なかなか元の食事に戻すことが難しくなりますが、病気の罹患期間が長くなると、低栄養状態が続き命にも関わるため、初期段階で治療することが大切です。
拒食症の診断
以下が診断の基準となります。
✅食事摂取量を過度に制限している。
✅極端に低体重である。<通常BMI:18.5以下>にも関わらず、体重増加に恐怖感がある。
✅食べることへの罪悪感がある
✅月経不順である
✅病気の重篤性を否認する
拒食症に合併して起こる症状
拒食症は低栄養状態が続くことで様々な合併症状を引き起こします。
無月経、月経不順
月経は子孫を残すための体の機能ですが、生きることが一番優先されるため、深刻な低栄養状態においては、生殖機能は正常に働かなくなります。この無月経や月経不順の期間が、長期に続くと将来の不妊症の原因にもなってしまいます。
低血圧、徐脈
体がエネルギー不足により、いわゆる省エネモードに入ってしまいます。心臓が省エネモードに入ると、低血圧や徐脈などが起こります。
睡眠障害、悪夢
眠るのにも体はエネルギーを必要とします。エネルギー不足により睡眠障害が起こります。
電解質異常
電解質異常により、こむら返り、耳鳴り、しびれや味覚障害など様々な症状が起こります。
骨密度の低下
カルシウム、タンパク質やビタミンDなど骨を構成するための栄養素が不足するため、骨密度の低下が起こります。この状態が長く続くと、将来、骨粗鬆症の原因になります。
その他、貧血、極度の冷え性など人によって様々な症状が出現します。
食事を過度に制限することで、低体重・痩せ体型をその時に維持することはできても、長い目でみて、月経不順、心機能の低下、骨粗鬆症などの合併症を引き起こすと、取り返しのつかない事態になってしまうことも少なくありません。
拒食症の克服方法
拒食症の原因が様々あるように、克服方法も人によって様々です。ここでは、よくご相談を受けるケースについてご紹介させていただきます。
ケース:体重増加を恐れ、食べることへの恐怖感がある。
体重増加を恐れる方の特徴は、痩せ体型を維持したい、太りたくないという気持ちが根底にあります。以下の方法を参考にして頂ければと思います。
克服法①:体重ではなく見た目にシフトする。
拒食症の方は、体重の数値的な目標がかなり厳しく、低体重を維持しようとします。自分が求めている体型がはたしてその体重でないと実現できないのか考える必要があります。
体重の数値目標から脱却できない場合は、自分が理想だと思う体型のモデルさんの写真などを参考にしてみるのも一つの方法です。
また、性ホルモンはコレステロールから合成されるため、体脂肪が22%以下で、無月経の場合は、体脂肪を少しずつ増やしていく工夫も必要です。
少しずつ食事を増やすことと、軽いエクササイズを組み合わせることで、急激な体重の増加を抑え、メリハリのある女性らしい身体に近づくことができます。
克服法②:食べ物の質を変える
カロリーがないもの、太らないものと選択していくうちに、生命活動を行う上で必要な栄養素が十分摂取できません。拒食症の方は、特に“炭水化物”や“揚げ物”などを食べないと徹底される傾向にあります。“炭水化物”も“油”も食べる食材と時間を工夫することで、急激に太ることはありません。
〇玄米、雑穀米のパン…精製度が低いため食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含む
〇アボカド…ビタミンEを含み体の酸化を防ぐ
〇ココナッツオイル…エネルギーとして代謝されやすいため太りにくい
〇オリーブオイル…腸の蠕動運動を促す、血液をサラサラにする作用がある
このように食べ物は、ただ「太る」「痩せる」「カロリーがある」といった要素だけではなく、私達の体を正常に働かすために様々なメリットがあります。
炭水化物・脂質を極端に制限してしまうと、ホルモンバランスが乱れ、無月経や不妊症などの原因になってしまうこともあります。また脳が正常に機能しなくなり柔軟な考え方ができなくなってしまうことも少なくありません。
それぞれの栄養素が与える体のメリットを意識し、食べ物の質から見直してみましょう。
ケース:痩せていることが自己肯定感につながっている
拒食症の方の中で、「痩せている=価値がある」という固定概念があり、なかなか拒食症の状態から回復できないことがあります。また、家族関係や友人関係などにおいて孤独感があるときにも、痩せていることで心を満たそうとする傾向があります。
克服法①:痩せ体型を維持する以外に、やりたいことは何か?
一度、自分の中で根付いた固定概念を変えることは難しいですが、「痩せている」こと以外にも、きっとやりたいことや目標があるはずです。
<「進学したい」や「将来就きたい職業」など、痩せていること以外の目標に目を向けることが克服への近道になります。>
目標を達成するためには、低栄養状態のままでは、脳も体も十分に働きません。
克服法②:自分が安心する人と食事をする
拒食症の人は、自分が食べているところを見られることに恐怖感や罪悪感があり、一人で食事をしようとします。また自分が安心できない人と食事をするとき、無意識に食事量を減らしてしまうという傾向もあります。
<家族を始め、自分が安心できる人と同じ量を食べてみることで、すぐには太らないことがわかると食への安心感に繋がります。>
最初は、難しくても食への恐怖感や罪悪感を少しずつ減らしていく食事を心がけましょう。
終わりに
拒食症は、「痩せていること」で自分自身が支えられているため、すぐに解决するのは難しい病気です。また体型・体重への執着だけでなく、人間関係が病気の進行と深く関わっていることも少なくありません。放っておくと深刻な状態につながりかねない病気でもあるため、早めに専門家に相談するようにしましょう。
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