~那覇国際高校・家庭クラブの『美味しくうさんでー大作戦!!』重箱料理リメイクレシピ紹介~
食に関する社会課題『食品ロス』。本来であれば食べられるのに捨てられてしまう食品のことですが、SDGsによる取り組みや政策の推進により、食品ロス削減は少しずつ進みつつあります。
食ZENラボでも、食品ロス削減に関するコラムや、もったいないを料理にする【サスティナブルレシピ】を料理家の方々と取り組み公開しています。
各自治体、法人、教育機関、個人の方々のあらゆるアイデア・工夫で食品ロス削減への取り組みがなされ、持続可能な社会へと歩んでいるわけですが、今回のコラムでは、食品ロスの現状をお伝えしながら、沖縄県の行事食である【重箱料理】で食品ロス削減に貢献している<沖縄県立那覇国際高等学校・家庭クラブ>の『美味しくうさんで~大作戦!!』の取り組みをご紹介するとともに、重箱料理を最後まで美味しくいただくための【重箱リメイクレシピ】をご紹介します。
食品ロスの現状
日本の食品ロスの現状
日本の「食品ロス」の年間量は、近年5年間の推移で、平成28年度643万トン、平成29年度612万トン、平成30年度600万トン、令和元年570万トン、令和2年度522万トンとなり少しずつ削減傾向にあります。(農林水産省:推計値)
それでも、現在、 年間522万トンの食品ロスが発生しており、
日本人 1人当たりの食品ロス量は1年で約41kg!
これは日本人1人当たり「毎日お茶碗一杯分」のご飯を捨てていることとなります。
食品ロスは大きく分ける、事業活動から発生する「事業系食品ロス」と各ご家庭から発生する「家庭系食品ロス」に分けられますが、食品ロス522トンのうち事業系食品ロス275万トン(53%)、家庭系食品ロス247万トン(47%)となります。
食品ロスの削減は、家庭で食品ロスが出ないようにするとともに、食品小売店、飲食店でも食品ロスが出ないよう意識し、行動を積み重ねることで、日本の食品ロス削減量を減らすことが必要です。その先に世界的に広がっている食糧難や飢餓(世界の9人に1人は栄養不足)、食品廃棄物による環境問題の解消にもつながっていきます。
「もったいない」を意識して、できることから始めてみませんか。
沖縄県の食品ロスの現状
今回は沖縄県の伝統的な行事食である重箱のリメイクレシピで食品ロスの削減をご紹介していきますが、その前に、沖縄県の食品ロスの現状を簡単にご説明します。
「沖縄県の食品ロス」の年間量は、6.1万トン発生し、事業系食品ロス2.6万トン(43%)、家庭系食品ロス3.5万トン(57%)となっています。
日本全体の家庭系食品ロス割合47%のため、沖縄県は家庭から出る食品ロスが割合が多い傾向にあります。
亜熱帯地域特有の食料保存環境やおもてなしの食習慣、他県とは違う家庭環境・労働環境の違い、立ち上がり始めたフードドライブの活用不足、島国という流通上の問題など解消するべきことは多岐に渡りますが、まずは、「もったいない意識による身近な食品ロスをなくす小さな取り組み」から、ゆいまーる精神で活動を自然に広げていくことが重要かと考えます。
沖縄県の食品ロス削減推進計画(2022年4月~)では、計画最終年となる 2031年度の食品ロス削減量は5万1004トンへ(6.1万トンから10年間で17%削減)の目標を掲げています。
那覇国際高校・家庭クラブの食品ロス削減活動
沖縄県立那覇国際高等学校・家庭クラブは、全国組織である全国高等学校家庭クラブ連盟に加盟して、学習活動を行われており、エシカル消費の観点や食品ロス削減の取り組みを研究し、実践しています。
エシカル消費の推進や実践を行う高校生等が日頃の取組みの成果や今後の展望等について発表する「エシカル甲子園」。2022年3月本選開催となったエシカル甲子園2021に、那覇国際高校・家庭クラブは『重箱料理のリメイクレシピ』で応募され、九州・沖縄ブロックで堂々の2位!(全国85校参加)
様々な活動をされていますが、今回は『重箱料理のリメイクレシピ』を考案し、食品ロス削減の取り組み『美味しくうさんで~大作戦!!』をご紹介します。
沖縄には、シーミー(清明祭)や旧盆、旧正月などで用意される重箱料理があります。
この伝統的な重箱料理は、お供え物としてのご馳走であり、美味しいのですが、やっぱり食べ続けると飽きがきてしまうこと、親族が集まりたべるため、どうしても沢山用意することになります。そのため、食べ残しにつながることもあり、家庭クラブメンバーは、この重箱料理に着目。メンバーの関係者家族を調査したところ、約75%の家庭で重箱料理が余っている現状を知った。重箱以外にオードブルなども並び、食べるものが多すぎることが原因だったといいます。
さらに「重箱料理は好きですか?」「重箱料理の廃棄はありますか?」「食べ残した重箱料理はどうしていますか?」など、年代別にアンケートを実施し、分析したことを発表。
重箱料理という伝統を継承しながら食品ロスをなくすためには何が出来るか。廃棄される理由なども調べて、家庭クラブのメンバーが考えたのは、重箱料理の「リメイクレシピ」でした。
「美味しく うさんでー 大作戦!!」(※)として、重箱料理の中身を活用できるリメイクレシピ考案や啓発をする食品ロス削減活動を展開し、沖縄県の食品ロス削減に貢献されています。
※ウサンデーとは沖縄方言で「お供えしたものをいただく事」を意味します。
重箱料理をリメイクすれば最後まで美味しく食べ切れることに気づいていてから、家でも色々アレンジして、食を楽しく、食品ロス削減を実践しつづけられている那覇国際高校・家庭クラブ。
重箱リメイクレシピの先駆けとなったこの「食品ロスゼロ」の取り組みは、多くの方に感銘と参考になるアイデアを与えてくれました。
「沖縄の行事に欠かせない重箱料理のリメイクレシピを考えました。余りがちなアイテムを最後まで美味しく頂くための工夫を皆んなで考えました!高校生でも簡単に作れて美味しいアレンジを紹介します。行事での食品ロスゼロを目指しましょうー」
那覇国際高等学校 平成10年に「国際化、情報化の時代に世界に飛躍できる創造的な人材を育成する『インテリジェントスクール』」として開校。校是「右文尚武」や校訓「自主、敬愛、飛躍」の具現化を図りながら、様々な特色ある教育活動を展開し、社会の各分野において多くの有為な人材を輩出。 文部科学省指定SGH(スーパーグローバルハイスクール)として、「SDGs」研究にも力を入れられ、総合的な探究の時間の中で、より深化させる教育を実践しつづけられている。
沖縄の重箱料理とは
那覇国際高校・家庭クラブの重箱リメイクレシピのご紹介の前に、重箱料理について簡単にご説明します。
沖縄の重箱料理は『ウサンミ(御三味)』と呼ばれ、「たくさんの美味しい味」を意味し、慶事と弔事、沖縄の行事に欠かせない供物です。
重箱料理は、重箱におかずをキレイに詰められた「おかず重」と、おもちを詰めた「もち重」を準備し、どちらも奇数品目(5品目、7品目、9品目)で奇数個を詰めるのが一般的です。
重箱につめる際には、賽の目のように区画を分けてきれいに詰め合わせていきます。
重箱料理 ©OCVB
かまぼこ、昆布(弔事では返し昆布、祝い事では結び昆布)、豚三枚肉の煮つけ、ごぼうの煮しめ(大根の煮付け)、島豆腐の揚げ豆腐、こんにゃく、カステラかまぼこ、田芋のから揚げ(ターンム料理)、魚の天ぷら など
那覇国際高校・家庭クラブの重箱リメイクレシピ考案は、重箱料理として良く使われている7品の残り物を中心にどう美味しくリメイクできるかを考えられています。
重箱リメイクレシピ紹介
それでは、那覇国際高校・家庭クラブの重箱リメイクレシピをご紹介していきます。
レシピページにリンクしていますので、詳細はレシピページをご覧ください。
ピザトースト*沖縄の重箱リメイクレシピ
沖縄の重箱料理の余り食材で美味しくアレンジしてみました。ピザトーストにしたら何でも美味しくなる説〜。
具材は小さめに切ると食べやすいです。
<重箱食材おすすめ>
かまぼこ、三枚肉、ごぼうなど(お好みで色々な食材に合います。)
スペイン風オムレツ*沖縄の重箱リメイクレシピ
沖縄の重箱料理の余り食材でスペイン風オムレツを作りました。お弁当にも使えます!調理済み食材だから時短になります。余り食材、何でもチーズ入りオムレツにしたら美味しい説〜です。
<重箱食材おすすめ>
かまぼこ、三枚肉、こんにゃく、ごぼうなど
三枚肉のレタス炒飯*沖縄の重箱リメイクレシピ
三枚肉(豚の角煮)はしっかり味が染みていて旨みばっちりなので、炒飯に良く合います。
他の重箱料理のアイテム(かまぼこやこんにゃく)も合います。時短になってるメニューです。
<重箱食材おすすめ>
豚三枚肉の煮つけ、ごぼうの煮しめなど
ごぼうのベーコン巻き*沖縄の重箱リメイクレシピ
重箱料理のアイテムをリメイクして残り物をゼロにしませう〜。シーミーやお盆の後にさっさっと作れます!
だしの効いたあっさりとしたごぼうの煮〆を使います。つまみや弁当にもとても合います。
<重箱食材おすすめ>
ごぼうの煮しめなど
三枚肉の梅しそ巻き*沖縄の重箱リメイクレシピ
弁当やおかずになる、三枚肉のレシピ考えてみました。本当に美味しいです!
重箱の具材は、味が付いているので、すぐに材料として使えます。
フライパンで、ささっと焼いてください。
<重箱食材おすすめ>
豚三枚肉の煮つけなど
チヂミ*沖縄の重箱リメイクレシピ
重箱の余り食材、三枚肉を入れてチヂミにしたら美味しくなりました!生地は片栗粉でもちっとして美味しいです。三枚肉を使いましたが、何でも美味しく仕上がると思います。
<重箱食材おすすめ>
豚三枚肉の煮つけなど
スンドゥブ*沖縄の重箱リメイクレシピ
重箱料理のかまぼこをライスペーパーで巻いてトッポギに見立て、人気の韓国料理にリメイクしてみました。
ちょうど良い辛さです。苦手な方は粉唐辛子を減らして下さい。
<重箱食材おすすめ>
かまぼこ、揚げ豆腐など
もちマフィン*沖縄の重箱リメイクレシピ
沖縄の行事に欠かせないもち(重箱白もち)。おもちをマフィンに入れた、もちリメイクアレンジレシピを考えました。もちもちで、ずっしりマフィンです!食べ過ぎ注意です。(笑)
<重箱食材おすすめ>
白もち、餡もちなど
お惣菜マフィン*沖縄の重箱リメイクレシピ
簡単で美味しくて可愛いマフィンが出来ました!ほんのり甘い生地とお惣菜の旨みが交互に来る美味しさです。冷めても美味しいです。
ゴーヤチャンプル、にんじんしりしり、きんぴらごぼう等のお惣菜もマフィンに合うと思います。
<重箱食材おすすめ>
ごぼうの煮しめ、豚三枚肉の煮つけ、かまぼこ、こんにゃくなど
コブサラダ*沖縄の重箱リメイクレシピ【サスティナブルレシピ】
ゆで卵で彩りアップ!タンパク質と野菜同時に摂れるご馳走サラダです。
食べる時は混ぜてミックスで食べます。お好きなドレッシングでどうぞ。
<重箱食材おすすめ>
ごぼうの煮しめ、昆布の煮つけ、かまぼこ、豚三枚肉の煮つけ
餅ホットク*沖縄の重箱リメイクレシピ【サスティナブルレシピ】
重箱のおもちを使って韓国おやつ・スイーツ「ホットク」を作ってみました!ホットケーキを焼く要領で弱火でゆっくり焼いて下さい。
<重箱食材おすすめ>
白もち、餡もちなど
家庭の食品ロスを削減する行動とサスティナブルレシピ
家庭系食品ロス量の原因を分類すると直接廃棄、食べ残し、過剰除去となります。内訳は以下の通りです。(令和元年度調査結果)
-家庭系食品ロスの原因内訳-
直接廃棄40.9%、食べ残し44.7%、過剰除去14.4%
【家庭系の食品ロスを削減するキーワード】
①買い過ぎない、②作り過ぎない、③食べ残さない
3つの「ない」を心掛けて、食材を無駄なく使っておいしく食べきりましょう!
家庭系食品ロスの原因別に食品ロスを出さない具体的なポイントをお伝えします。参考にしていただき、食品ロスの軽減へ一緒に楽しく取り組めていけたら幸いです!
賞味期限などの理由で、手つかずのまま廃棄されてしまう直接廃棄の問題は、適切な保存方法や食材を無駄にしないレシピの智恵を身につけることが大切となります。もちろん、余剰食品はフードバンクへの提供も効果的です。
割合の多い食べ残しなどによる食品ロスでは、調理時の行動として、以下のポイントを意識して食品ロスを出さない工夫を心掛けていただければと思います。
・適切な保存方法で、長持ちするよう食材を保管する
・まとめて下処理する、使う分だけ小分けしておく
・食べきれる分だけ作る(体調や家族の予定も配慮して作る量を調整する)
・食材を無駄にしないレシピを参考にする、エコクッキング技術の習得
・残っている食材や賞味期限が近いものから使う
・除去部分を減らす(野菜の皮や脂身の利用、ピーラーやフードプロセッサ ー等の活用)
食品ロス削減のポイントを学ぶおすすめコラム
レシピカテゴリー(レシピ一覧ページ)
食ZENラボでは、SDGs視点や食品廃棄物・フードロスの削減に寄与するレシピを取り上げ公開しています。レシピを参考にしていただき、地球に、食に、善い<食善>活動をご一緒できたら嬉しいです☆
また、みなさまからのサスティナブルなレシピもぜひお寄せください。食ZENラボにレシピ情報を提供いただきましたら、「みんなのレシピ」として紹介させていただきます。
重箱料理という伝統的な沖縄料理は後世に残しながら、食品ロスを無くしていくために、食べやすくアレンジしようと思い考えられ取り組まれてきた那覇国際高校・家庭クラブの『美味しく うさんでー 大作戦!!』『重箱料理リメイクレシピ』
高校生たちの素晴らしい想いと取り組みから学び、食に向き合う私達の智恵として活かしながら、食品ロスが発生しない未来へと繋げていきたいですね。
参考・出典・引用
・農林水産省WEBサイト(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html)
・沖縄県食品ロス削減推進計画(令和4年3月)
・沖縄県食品ロス削減県民運動ロゴマーク及びキャッチフレーズ
編集:株式会社インフィニティラボ 食ZENラボ編集部
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