フルーツで感じる季節・ヨーロッパの四季【料理/食文化研究家コラム】

「皆さん、果物はお好きですか?」 

ビタミンやミネラル、食物繊維など、体が喜ぶ栄養素が手軽にとれるフルーツは、私たちの食生活になくてはならないものです。しかし意外にも、近年、果物は、食べる時間がなかったり、価格が高めだったりと、さまざまな理由で私たち日本人に敬遠されてしまいがちです。

そんな果物は、じつは単なる栄養面や味の美味しさだけでなく、季節の移り変わりを知らせてくれるとても魅力的なものでもあります。私たちは店頭に並ぶ果物の種類を見て、「もうそんな季節になったのか」と驚き、また来年もこの旬の味覚を味わえることを心待ちにすることさえあります。

春のイチゴに、夏のスイカモモ、晩夏から秋にかけてのブドウナシ、晩秋から冬にかけてのリンゴミカン――。

果物は、形や明るい色合い、芳醇で甘酸っぱい香りや味わい、あふれるばかりの果汁によって、より鮮烈な印象を私たちの心に残してくれます。

そこで今回は少し目先を変えて、私たち日本人には少しなじみの薄い、ヨーロッパの四季の移り変わりと果物の関係についてお話してみようかと思います。そこには日本の場合に負けずとも劣らない、ちょっと楽しい食の風景が広がっていますよ。

 イチゴとルバーブの春 【春】

春――。長く厳しい寒さを乗り越え、ようやく迎えたこの季節、ヨーロッパの市場に並ぶのは目にも鮮やかな『イチゴ』と『ルバーブ』です。

ルバーブ』というのは、まるでフキのように長い茎を食べる赤い色をしたタデ科ダイオウ属の野菜です。日本でも最近少し珍しい野菜として時折見かけるようになってきましたが、その綺麗な色合いと酸味のある味わいをいかしてよくジャムコンフィチュールなどに加工されます。

ルバーブはイチゴとの相性がとても良く、赤い色をしたイチゴと加熱した時にピンク色になるルバーブは、見た目からしてもよく合います。春のさわやかさや明るい雰囲気を思わせる、甘酸っぱく鮮烈な香りも好相性です。両者はこの時期、まるでセットのようにしてヨーロッパの食卓を彩ります。

ヨーロッパのイチゴ』は日本のものに比べるとかなり小ぶりですが、もともと鮮度が味に影響しやすい果物のため、この時期にはこれとホワイトアスパラガスだけは地元産のものにこだわるという人も少なくありません。市場に足を運べば、それこそ山盛りのイチゴが量り売りされています。日本のものより甘酸っぱくて野性味あふれるイチゴを頬張りながら、温かくなってきた陽射しの下、市場を眺め歩くのは本当に楽しいものです。

 サクランボと夏の始まり 【初夏】

さて、次に旬を迎えるのは『サクランボ』。地域にもよりますが、だいたい6月末頃になると、それまで市場を席巻していたホワイトアスパラガスが突如姿を消します。ホワイトアスパラガスは、フランスやベルギー、オランダ、イタリア、ドイツなど、ヨーロッパの一部地域では春の風物詩とも言える代表的な野菜ですが、ドイツには「サクランボが赤くなると、ホワイトアスパラガスの季節は終わり」という言葉があるくらい、サクランボは夏の訪れを思わせる果物です。

場所によっては春からすでに赤くなってきているサクランボですが、やはり初夏が旬という所が多いようです。そんなヨーロッパのサクランボは、いわゆるアメリカンチェリーのような、濃いめの赤い色合いのもの『ダークチェリー』が主流。酸味もあるので、こちらも保存の効くコンフィチュールにしたり、あとはケーキなどに入れて加熱した形でもよく食べられます

加熱したサクランボはさわやかな甘みと酸味が心地よく、ヨーロッパではおそらくイチゴジャムよりもこちらのほうが目にする機会が多いくらいです。加工されたものがワッフルやケーキに添えられていたりと、一年を通じて食卓で活躍するフルーツです。

 涼をはこぶ夏のフルーツ 【夏】

すでに初夏には陽射しが厳しくなるヨーロッパの気候。夏ともなれば、そこに湿度の低さが加わるので、うっかりしているとたやすく熱中症になってしまいます。というのも、陽射しはきつくとも日本の夏のように蒸し暑いわけではないので、基本的にヨーロッパの建物にはエアコンがあまり設置されていないからです。

とはいえ、昨今の異常気象で、ヨーロッパでも暑さがこたえる日というのが出てくるようになりました。しかも観光や仕事などで屋外を歩き回っていると、足下の石畳からの照り返しもそう馬鹿にはできません。

そんな時に真似したいのが、現地の人の暑さのしのぎ方。市場に足を向けると、そこには『スイカ』、『モモ』、『ブドウ』といった、水分たっぷりの美味しそうな果物が並んでいます。そして暑い日には、それを皆が次々に買い求めては、老いも若きもその場でつまんだり、なかにはスイカにかぶりつきながら歩く人まで見かけます。

そんなフルーツの食べ方は、一見お行儀が悪いようにも思えますが、体を守る上ではじつは大切な知恵でもあるのかもしれません。なぜならそうした果物は、汗と共に失われた水分やミネラルを即座に補給する役割を果たしてくれるからです。

 芳醇な秋の果物 【秋】

朝夕にはすでに肌寒ささえ感じられるようになる秋。夏の終わりから秋にかけて旬を迎えるのは、『プルーン』や『マルメロ(セイヨウカリン)』といった果物たちです。これらの果物は、水分量が少なくて固く、味にもクセがあるものが多いので、そのまま生で食べるというよりは加熱してからお菓子や料理に使われます。

そして、きのこやジビエ、新ワインなど、素晴らしい味覚には事欠かないこの季節。そのまま食べても美味しい『ブドウ』や『リンゴ』、『ナシ』、『プラム』などのフルーツももちろん食卓に並べられます。果物が持つ芳醇な香りと甘み、ほどよい酸味は肉や魚、お酒とも相性がよいので、ヨーロッパでは特によく食卓に登場するのですね。



 心も温めるフルーツの香り 【冬】

さて、寒さの厳しい冬にも、果物は食卓に心の豊かさや安らぎのひとときをもたらしてくれます。

この時期、特に重宝されるのは、赤やオレンジなど、見た目にも温かみのある『リンゴ』や『柑橘類』。
特に12月にはクリスマスを控えているため、クリスマスリースやオーナメントには、シナモンスティックやクローブなどの乾燥スパイスと共に、干したオレンジやリンゴのスライスなどが添えられることもよくあります。

見た目の可愛らしさだけでなく、こうしたスパイスやフルーツには、じつは大変実用的な効能も隠されているのも大きな特徴です。スパイスには身体を内側から温めてくれる効果が、そしてミカンやオレンジ、金柑などの果物には、冬の時期には特に積極的に摂取したいビタミンCが豊富だからです。

11月末頃から各地で開催されるクリスマス市の定番、<ホットワイン>もそんな組み合わせで作られるもののひとつ。温めたワインと、スパイスやフルーツの味わい、元気の出る香りは、冷え切った石畳の上でも芯から心と身体を温めてくれます。

毎シーズン、その時々の旬のフルーツを美味しくいただく。そんな楽しみがあったら、毎日の食卓がより楽しいものになるような気がしませんか? ぜひ皆さんもお気に入りのフルーツを味わいながら、季節の移り変わりを楽しんでみてくださいね。



 フルーツを使ったおすすめレシピ
さくらんぼを使った欧州家庭料理レシピ<さくらんぼ&豆腐のヘルシークラフティ>

クラフティ>は、フランス中南部・リムーザン地方の伝統菓子ですが、今や世界中で愛されています。

人気の秘密はなんといっても、とても簡単に作れてフルーツの美味しさを丸ごとしっかり味わえること。今回はそれを少しヘルシーにアレンジして、絹ごし豆腐を加え、控えめ、生クリーム不使用で作っていきます。

さくらんぼ&豆腐のヘルシークラフティで♪初夏のフルーツを楽しむ写真2
りんごを使った欧州家庭料理レシピ<タルト・フランベ>

フランス北東部・アルザス地方の郷土料理、<タルト・フランベ>。さまざまな具材で楽しめますが、本レシピは、定番のベーコンと玉ねぎ、そしてスイーツ風にも楽しめるリンゴとはちみつの2枚を作っていきます。是非、ご覧ください☆

アルザス風薄焼きピザ♪タルト・フランベ写真1

また、本レシピ<タルト・フランベ>をオンライン料理教室で学べる講座を開講中です。欧州の食文化を学びながら、アルザス地方の名物料理の一つを学びましょう♪ご自身へのご褒美、イベントでのおもてなし料理に☆彡いつでも好きな時に受講可能なオンデマンド動画となっています。是非、ご視聴ください。

料理/食文化研究家・庭乃桃さん

料理/食文化研究家・庭乃桃さんMeal Partner_Food Culture Researcher

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大学院でヨーロッパ地域の歴史・文化を専攻し、現地へ留学。
企業向けレシピの開発やスタイリング・撮影を手がけるほか、書籍・コラムの執筆や、翻訳、講演など多方面で活動中。

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