豆乳・みそなど大豆加工食品のパイオニア企業・マルサンアイ株式会社さんには、みそのプロフェッショナルがいらっしゃいます。今回は、日本のみそと赤だし(豆みそ)の歴史について、みそ博士こと研究開発室の寺嶋さんに伺いました。
全国に広がる多種多様なみその分布について
みそは米みそ、豆みそ、麦みそ、調合みそ に分けられます。 調合みそには、米みそと豆みそを混合したもの、米みそと麦みそを混合したものなどがあります。
東海地方では『赤だし(豆みそ)』が愛用され、八丁みそ、名古屋みそ、三州みそなどの名称で親しまれています。また、宮城では伊達政宗が戦の兵糧や凶作に備えたみそは、現在『仙台みそ』と呼ばれており、米麹を原料に使用する米みそに分類され、濃厚で香り高いみそです。一方、かつて都があった京都では、華美な王朝文化の中で白くて甘いみそ『西京みそ』が生まれました。このように、日本全国には郷土色豊かなみそがあります。
赤だし(豆みそ)の歴史を紐解く
なぜ、赤だし(豆みそ)が東海地方で定着したのか?赤だし(豆みそ)の歴史を紐解いてみます。
豆みそは中国大陸から朝鮮半島を経て、日本に伝わってきたと言われています。朝鮮半島からの移民が東海地方に定着したため、豆みそがこの地で発展したと言われています。朝鮮半島には大豆を原料とした豆みそに似たテンジャンという調味料があります。
東海地方では濃尾平野という米麦の大産地を抱えながら米みそ、麦みそが定着しなかったのは、この地方の夏は高温多湿で酸敗が起こりやすいので、米麹、麦麹を使わずにみそ玉製法といった大豆に直接麹菌を生育させる技法を守ってきたからと言われています。赤だし(豆みそ)は高温に耐え、長期保存が可能な個性的な食品として続いてきました。
赤だし(豆みそ)の特徴:メラノイジン
みそは発酵・熟成するにつれて、褐色に変化していきます。これはメーラード反応*によりメラノイジンが蓄積したためです。
みそは地方色の豊かな発酵食品であり色調も様々ですが、主に東海地方で食される赤だし(豆みそ)は特有の赤褐色や黒褐色のみそになります。赤だし(豆みそ)は他の米みそや麦みそとは違い長い期間をかけて熟成されるため、多くのメラノイジンが蓄積されています。
1912 年にフランスの化学者 Louis Camille Maillard が、アミノ化合物(アミノ酸など)とカルボニル化合物(糖など)が反応し褐色に変化することを報告し、その名をとってメーラード反応と名付けられました。メーラード反応の最終物質はメラノイジンと呼ばれ、これが蓄積することで褐色に変化します。
このメラノイジンは強い抗酸化作用を持っています。抗酸化とは活性酸素を取り除き、酸化を抑える働きのことを言います。活性酸素は人体に微量であれば有用な働きもしますが、大量に生成されると人体が酸化されることで老化やがんなどを引き起こします。
そのため、メラノイジンを摂取することで酸化を抑え、疾病を抑制できると考えられています。また、メラノイジンには老化やがんの抑制以外にも、整腸効果、コレステロール低減効果、インスリン分泌促進、動脈硬化抑制など多彩な生理機能の可能性が報告されています。
赤だし(豆みそ)が夏バテにおすすめな理由
そのため、赤だし(豆みそ)は大豆が持つイソフラボンやサポニンなどの機能成分が米みそよりも多く含まれます。また、みそは長い熟成を経ることで、イソフラボンやサポニンに結合している糖が取れ、たんぱく質も分解されアミノ酸やペプチドにまで変化しているため、体が吸収しやすい形になっています。
大豆のイソフラボンやサポニンは抗酸化作用のある物質として知られていますが、大豆そのものよりも、みその方が極めて高い抗酸化作用があると言われています。これは熟成によって分解された成分やメラノイジンの効果だと想定されます。
こうしたことから長期熟成の赤だし(豆みそ)は、大豆の栄養成分や熟成により分解された成分が多く含まれ、夏の暑い日には体のバランスを整える食品としておすすめですね。
<このコラムの執筆者> 寺嶋祐司さん
マルサンアイ株式会社 開発統括部 研究開発室・研究課
東京農業大学大学院農芸化学専攻博士前期課程卒業後、マルサンアイ株式会社入社。みそを主とした大豆の研究に従事。基礎研究、大学との共同研究のほか、商品開発、品質・技術改良にも携わる。
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