ハロウィン – 不思議に満ちた「古くて新しい」イベント –

秋が深まるにつれて話題にのぼる、“ハロウィン”。

近ごろでは街中にさまざまなグッズが並び、ニュースなどでもその人気ぶりが伝えられるので、なんとなく気になるという方も多いのではないでしょうか。
けれど、私たち日本人が知っているようでいて意外とよく知らないのが、このハロウィンというイベント―。

そこで今回は、ヨーロッパで生まれ、やがてアメリカで人気となり広まったハロウィンについてお話してみたいと思います。

いまや季節を楽しむ上では欠かせないイベントとなったハロウィンが、なぜこんなにも人気を得るようになったのか、その独特の楽しみ方や、魅力のヒミツなども見つかるかもしれません。

 かぼちゃとハロウィン

ハロウィンといえば、なんと言ってもすぐに思い浮かぶのがあのオレンジ色をしたかぼちゃですね。それをちょっぴり怖い顔の形にくりぬいた、ジャック・オー・ランタンなども有名です。

しかしハロウィンは、最初からこのオレンジのかぼちゃがモチーフになっていたわけではありませんでした。じつは以前は、まったく別の食べものが使われていたのです。

ハロウィンの故郷・アイルランドで作られていたのは、「かぶのジャック・オー・ランタン」。もともとのヨーロッパでは、身近にあったこうしたかぶなどの野菜でハロウィンのモチーフが作られていました。

しかしその後、たくさんの移民がアメリカに渡ったことでハロウィンが広まり、手に入りやすくてより見栄えのする、あのオレンジのかぼちゃが主役として人気になっていったのです。

 “ハロウィン”の意味

それではそもそも、ハロウィンというのはいったいどんなイベントだったのでしょうか? 

その答えは、ハロウィンの日、つまり10月31日という日付に隠されています。

もともとヨーロッパでは、この時期、夏に別れを告げて冬を迎える準備をしていました。それまで青々しかった木々が葉を落とし、草木も動物も人も沈黙する、長く厳しい冬が始まる季節。それがちょうどこのころだったのです。

そのため、はるか昔から、ヨーロッパではこの季節にひとつの大きな節目を意味するさまざまな行事がおこなわれてきました。そのひとつというのが、11月1日の万聖節(諸聖人の日)です。英語ではAll Saints または All Hallowsと呼ばれますが、「ハロウィン(正式な読み方は、ハロウィーン Halloween)」というあの名称は、この万聖節の前夜(All Hallows’ eveという意味からきていると言われています。

11月1日の万聖節は、キリスト教の聖人や殉教者を記念する日。そして翌2日は万霊節(死者の日)といって、亡くなった家族や親族を想いながら過ごす日ともされています。もともとキリスト教が広まる以前のヨーロッパには、この時期を一年の切り替わりと考える風習があり、人々の記憶のなかには、このころにあの世とこの世の境目にある扉が開き、死者の世界にもっとも近づくというイメージが刻み込まれていました。

ハロウィンといえば、今でもお化けや悪霊、ドクロなど、ちょっと怖いモチーフがよく登場しますよね。それは、もともとハロウィンが、妖精や悪霊といった超自然的なものととても近くなる日だったからなのです。そしてそうした恐ろしい存在を追い払うために始まったのが、このハロウィンというお祭りでした。

 ハロウィンを彩る食べものたち

さて、イベントごとというと、やはり気になるのが食べものや料理の話です。

なにしろハロウィン自体、「オレンジ色のかぼちゃ」という目を引く食材があるので、それ以外にどんなものがあるのかというのは、意外と知られていないかもしれません。

じつは、ヨーロッパの先住民であるケルト人の文化に起源を持つハロウィンには、ほかにも古くから親しまれてきた食材というのがいくつかあります。

たとえば、「りんご。保存性が高く、ヨーロッパでは秋冬には貴重となる定番の果物ですが、ハロウィンの日には伝統的にこれを使ったゲームなどがよくおこなわれてきました。

Photo by Caleb Zahnd, Apple bobbing

さらには、最近日本でも人気のオートミール押し麦。これは、ハロウィンの夜、子どもが妖精にさらわれそうになった時に魔除けのおまじないのようにして使われました。

コラム引用:オートミールとは(種類、期待される栄養・効果等) 
押し麦
 

そのほかにも、ナッツ類などの木の実や、キャベツケールなど。

いずれも身近にある食べもので、手に入りやすく、栄養価が高いものばかりです。アメリカに渡ってあの「オレンジのかぼちゃ」に出会う前のハロウィンは、そんなヨーロッパの人々にとっての親しみ深い食べものとともに楽しまれていたんですね。

アイルランドでは今でも、ケールやキャベツが入ったポテトサラダのような料理、「コルカノン」がハロウィンの日の食卓に並びます。

Photo by Niwano Momo -コルカノン
 人と人を結ぶハロウィン

さて、そんなハロウィンは、アメリカに渡ってさらなる進化を遂げました。

おなじみのオレンジのかぼちゃはもちろん、いま私たちが知っているハロウィンの仮装や、子どもたちが…

「トリック・オア・トリート!」

と言いながらお菓子をねだって歩く風習は、すべてアメリカで定着していったものです。

お化けや魔女の仮装をしたり、皆でわいわい騒いだり。もとは、その日にやってくる悪霊を追い払うための習わしでしたが、そんな日常とはちがう特別なひとときは、遠くふるさとを離れて新天地へと渡ってきた移民の人々にとってもやがて大きな意味を持ち始めました。

なぜなら、そんなハロウィンならではの楽しげな雰囲気は、見知らぬ土地で暮らす不安や寂しさをまぎらわし、新たな人間関係を作る助けとなり、いつしか人と人とを結びつける力を持つようになっていったからです。

こうしてアメリカで人気を博したハロウィンは、この日本をはじめ、今や世界中の国々で知られ、さまざまな形で楽しまれるようになりました。

今年のハロウィン、皆さんはどんな風にお過ごしになるのでしょうか?

ハロウィンはもともと、悪いものを追い払い、新しい世界への扉を開くという側面を持っているイベントです。

おいしいかぼちゃはもちろんのこと、りんごや押し麦など、この季節を彩るさまざまな食べものやお料理で、ぜひ思い思いの楽しい一夜をお過ごしください!


●参考文献:庭乃桃『おいしく世界史』柏書房、2017年


   レシピ:かぼちゃと押し麦のリゾット♪ハロウィンの食卓にも
料理/食文化研究家・庭乃桃さん

料理/食文化研究家・庭乃桃さんMeal Partner_Food Culture Researcher

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大学院でヨーロッパ地域の歴史・文化を専攻し、現地へ留学。
企業向けレシピの開発やスタイリング・撮影を手がけるほか、書籍・コラムの執筆や、翻訳、講演など多方面で活動中。

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