『隠れ貧血』ー栄養カウンセリング・食の悩み相談事例【薬剤師コラム】

栄養カウンセリングを日々お受けする中で、女性の体調に関して、食の悩みや栄養面の相談を寄せられます。その中でも、今回は『隠れ貧血』についてご紹介いたします。

 からだの不調、女性だからと諦めていませんか?

病気とまではいかない、検査で何も異常がなかった、でもなんとなく体調が悪い。

「頭が重い」「寝ても疲れが取れない」「イライラする」などの症状があるが、原因となる病気が見つからない場合、「不定愁訴」と言われてきましたが、近年、栄養的アプローチが取り入れられることで、原因となる栄養欠損が明らかになってきています。

本コラムでは、女性の不定愁訴と関連性が高い『隠れ貧血』と食事改善のポイントをご説明いたします。

 隠れ貧血に注意

日本人の女性の10人に1人が貧血であり、生理のある女性に絞ると、なんと5人に1人が貧血であるといわれています。

一般的な貧血の症状は「めまい」や「倦怠感」というものが有名ですが、「肌荒れ」「肌のくすみ」「朝の起きづらさ」「イライラ」の原因になることもあります。

このような症状は、病院でも原因がわからないケースが多く、検査上問題がない上に、すぐに命に関わるわけではないため、「体質なのかな…。」と諦めがちです。

貧血とはヘモグロビンというたんぱく質が不足する状態ですが、ヘモグロビンは、身体に酸素を運搬しているため、貧血症状が続くと、身体はエネルギーを産生することができず、どんどん症状が悪化してしまいます。

この体の状態は、例えると、標高が高い山の山頂(一般的に酸素濃度が薄い)で、仕事をしたり、長く生活をするようなものです。考えるだけでも、呼吸が苦しく体が疲れてしまいますね。

症状が軽いうちに、お食事やサプリメントから鉄分を補いましょう。

【隠れ貧血の主な症状】
✓立ちくらみ、めまい、耳鳴りがする
✓疲れやすい、寝起きが悪い
✓顔色が悪い、肌荒れがある
✓注意力の低下、イライラしたり落ち込んだりする
✓のどの不快感
✓体を動かすと息切れや動悸がする

など人によって、症状の出方は様々です。

 隠れ貧血は血液検査に現れない?

<貧血の診断基準は、ヘモグロビン濃度 12g/dl未満です>

女性は、月経による出血で鉄が失われるため男性より貧血になりやすい性質があります。

鉄は、特に意識しないと1日必要量がしっかり摂れない上に、非ヘム鉄(植物性由来のものが多い)は吸収率が乏しいため、不足しやすくなります。

ヘモグロビン濃度が正常範囲であっても、多くの女性が「隠れ貧血」の状態にあることがわかっています。

これは、体内の鉄の60~70%はヘモグロビンと結合して血中に存在しますが、残りの30~40%はフェリチンと結合し、貯蔵鉄として肝臓や膵臓に蓄えられていることにあります。

つまり、血中では不足していなくても、貯蔵鉄である組織中で不足してしまうと、鉄の利用効率が悪くなり貧血症状をきたしてしまいます。

 鉄不足になる原因

鉄が不足する原因は主に4つ(摂取不足吸収不足需要の増加消費の増大)あります。

摂取不足

食べ物から十分に鉄が摂取できないと、鉄不足になってしまいます。

吸収不足

腸内環境が悪化していると、必要な鉄が十分に吸収できないため不足してしまいます。 また非ヘム鉄の吸収には胃酸が必要なため胃腸の状態も大切です。

需要の増加

妊娠や授乳中は、赤ちゃんの栄養のために、体内で通常よりも多くの鉄を必要とするので鉄不足になりやすい状態です。 妊娠・授乳期は月経がないため、不足しにくいと思われがちですが、実は生理があるときよりも体での需要量は増加しています。 この時期に鉄不足が続くと産後うつや乳児湿疹の原因の1つになると言われています。

消費の増大(出血)

女性は、毎月の月経があるため鉄が消費されます。 月経前後に貧血症状が出る方は、子宮筋腫や子宮内膜症の疑いもあるため、毎月の症状が強い方は婦人科を受診しましょう。

 鉄を含む食品

<国が推奨している1日の鉄の推奨量は成人女性では10.5mgです>

鉄には、ヘム鉄(動物由来が多い)非ヘム鉄(植物由来が多い)があります。

ヘム鉄と非ヘム鉄では吸収率が5~6倍も違うと言われており、貧血症状があるときは、吸収力のいいヘム鉄がおすすめです。

【ヘム鉄を多く含む食品 (一食あたりの目安量g)】

・アサリの缶詰(65g1缶あたり19.3mg)
・赤身のお肉(120gあたり2.9mg)
・いわし(100gあたり4.4mg)
・豚レバー(80gあたり10.4mg)

【非ヘム鉄を含む食品(一食あたりの目安量g)】

・乾燥ひじき(15gあたり8.3mg)
・小松菜(80gあたり2.2mg)
・納豆(50gあたり1.6mg)
・大豆(30gあたり2.8mg)
※注意したいのが、卵、乳製品は動物由来ですが、含有している鉄は非ヘム鉄に該当します。

 非ヘム鉄の吸収をあげるための食事のポイント

非ヘム鉄は、ヘム鉄に比べ、吸収がよくありませんが、食事を少し工夫することでその吸収率を上げることができます。

【非ヘム鉄の吸収を促進する食品】

<ビタミンC>ピーマン、ブロッコリー、じゃがいも
<動物性タンパク質>魚、肉類
<クエン酸>黒酢、レモン、梅干し
<乳酸>味噌、ヨーグルト、チーズ、キムチ

非ヘム鉄も工夫次第で、吸収率をアップすることができるため、上記食品を食べ合わせや献立の参考にしましょう。

 サプリメントの過剰摂取には注意!

現在、外国産のサプリメントも容易に手に入り、吸収率の良いキレート鉄などのサプリメントがでてきております。

キレート鉄は吸収がいいのは確かですが、その吸収のメカニズムは、ヘム鉄や非ヘム鉄とは異なることが明らかになってきています。鉄は体内で過剰になってしまうと、他のミネラル(カルシウム、マグネリスムや亜鉛など)の吸収を阻害してしまったり、過剰になった鉄から、活性酸素が発生し老化の原因にもなってしまいます。

サプリメントを選択するときには、かかりつけの医師や薬局の薬剤師に相談しましょう。

 終わりに

鉄は体の隅々まで酸素を運び、エネルギーを産生することでイキイキした生活の支えになる栄養素です。不調があるときは、「女性だから」「体質だから」と諦めず、ぜひ、お食事を見直し、より体調がよく心身ともに健康的な体を手に入れましょう。


鉄分を摂取できる『冷え症さんのための薬膳ポカポカチゲスープ』もご参考頂ければと思います。

薬剤師-栄養カウンセラー・冨尾ありささん

薬剤師-栄養カウンセラー・冨尾ありささん(一社)インナービューティープランナ-

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薬剤師の経験と栄養の知識を通じて「共働きのお母さんの幸せを叶える」ことをミッションに活動。
薬学と栄養学で顧客の美容・健康計画を叶えるだけでなく、調和のとれた豊かな暮らしをサポートする起業支援に従事。単なる起業支援ではなく、「魅力的に年を重ねるライフスタイル」をトータルサポートしている。
フルタイム勤務しながらフリーの仕事である料理教室・栄養セミナー受講者は1年で600人、カウンセリング薬局のべ5000人

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