成長期のこどもの食事で心がけたいこと【管理栄養士コラム】

近年、日本の子どもたちの食生活が懸念されています。
食が豊かな日本ですが、「好きなものをいつでも食べられる」という恵まれた環境が、かえって栄養バランスの偏りや肥満等を引き起こすからです。
子どもの頃に培われた食環境や食習慣こそ、将来の健康的な体づくりの基礎となります。
今回は、押さえておきたい『成長期の子どもの食事のポイント』をご紹介します。

 成長期に気をつけたい食事のポイント

成長期は、身長や体重の成長はもちろん、運動機能や精神機能が発達し、成人に向かって発育する大事な期間です。毎日の食事で気をつけたい「基本的なポイント」を押さえていきましょう。

   朝食をしっかり摂る

朝食を摂ることで体内時計がリセットされて、生活リズムが整い、心身ともに1日の活動スイッチが入ります。そうすると、勉強や運動に対してやる気が出たり、集中力がアップするなど活発的な行動につながりますが、逆に朝食を摂らないとエネルギーや栄養不足となり、風邪やケガの原因につながってしまいます。「疲れやすい」、「頭が働かない」、「間食が増えて肥満」などの問題が起こることも考えられますので、これらを防ぐために、決まった時間に起床して、「ご飯(パン、麺類)」、「おかず」、「野菜」、「牛乳・乳製品」、「果物」の5つがそろった朝食を食べることが理想です。

   規則正しい食事を心がける

食事の基本は、朝・昼・夕の3食をしっかり摂ることです。特に欠食が続くと、成長期の発育に大きな影響を及ぼします。例えば、「成長障害」という年齢に応じた標準の体格からかけ離れてしまう等があります。

子どもが成長期に入ると学校の部活動や塾、習い事などで、家族と違う生活リズムを送ることも多くなってくるでしょう。不規則な生活リズムになると、欠食や深夜帯の食事など食生活も乱れやすくなりがちですが、体や発育にとっては規則正しいのが一番。普段の食生活を見直し、食事のリズムを正しく保ちましょう。

   栄養バランスが整った食事を意識する

「栄養バランスが整った食事と言っても、具体的に何をどのくらい食べればいいのかわからない…」そのような方も多いのではないでしょうか。そんな時に活用してほしいのが『食事バランスガイド』です。平成17年に厚生労働省と農林水産省が発表したもので、1日に「何を」「どれだけ」食べたらいいかをコマの形を用いて示しています。5つの料理グループ(主食・副菜・主菜・牛乳/乳製品・果物)から構成され、コマのバランスをとるように、それぞれ参考の摂取量が記されています。食事バランスガイドを参考に、あらためてバランスの良い食事を意識してみましょう。

引用:農林水産省<食事バランスガイド>
 積極的に摂りたい栄養素

成長期の過程で特に重要な栄養素があります。どのような栄養素か、どのような方法で摂取したら良いかをご紹介します。

   カルシウム

成長期のカルシウム必要量は、男女とも生涯のうちで最も多く、推奨量は12〜14歳の男子で1000mg女子で800mgとなっています。また、カルシウムの吸収率が高いのも思春期(男子:12~17歳、女子:10~14歳)で、成人の約1.5倍にもなります。このように、10代のうちに骨量を増やせるかどうかが、将来丈夫な骨づくりの肝となることがわかりますね。カルシウムは、牛乳、ヨーグルト、ほうれん草、小松菜、ひじき、木綿豆腐、納豆、小魚などに多く含まれています。その中でも、牛乳はカルシウムの吸収率が他の食材より優れていて効率よく手軽に摂れるのでおすすめです。また、学校給食で牛乳が出ると思いますが、給食がない日はカルシウムをはじめとする子どもの成長に欠かせない各種栄養素の摂取量はグンと下がる傾向にあるので、家庭でも意識してカルシウムを摂取しましょう。

   たんぱく質

骨、血液、筋肉など身体を作るのに必要な栄養素です。たんぱく質が不足してしまうと体力や免疫力の低下、ケガの要因、感染病にかかりやすくなるなど様々な問題を引き起こしてしまうので、肉や魚、卵などの動物性食品や大豆製品を中心に積極的に摂りましょう。さらに、たんぱく質は複数の食品から摂ることで効率よく摂取することができるので、色々なたんぱく質食品を組み合わせることがおすすめです。また、1回の食事で吸収できる量も限られているので、朝・昼・夕と間食にもたんぱく質を取り入れて、摂取回数を増やすこともポイントです。

   ビタミン

ビタミンには体の様々な機能を調整する重要な役割があり、健康な体を維持するのに欠かせない栄養素です。ビタミン不足の状態では食べ物からエネルギーをつくれず、疲れやすい体になってしまいます。ビタミンは全部で13種類ありますが、全てを満遍なく摂取することは簡単ではありませんので、特に成長期に重要となるビタミンを効率的に摂取するのがおすすめです。成長期の子どもにとって、大事なカルシウムの吸収促進や骨づくりを助ける働きがあるビタミンDは積極的に摂取したいですね。ビタミンDを多く含む食材は、魚、きのこ類、卵などがあります。また、不足してしまうと子どもの成長障害を引き起こしてしまうビタミンAも意識して摂りたいビタミンの一つです。主に、にんじん、ほうれん草、モロヘイヤなどの野菜類に多く含まれています。

   鉄

一般的に女の子は月経があるため、男の子よりも貧血になりやすいといわれています。そのため、女の子は男の子よりも多くの鉄分を摂る必要があります。また、鉄には吸収されやすいヘム鉄と吸収されにくい非ヘム鉄がありますが、非ヘム鉄であってもビタミンCと一緒に摂ることで吸収されやすい鉄に変わるので、小松菜やキャベツ、果物などと一緒に食べることが大切です。鉄を多く含む食材は、豚レバー、しじみ、あさり、小松菜、納豆などが挙げられます。

 虫歯とおやつの関係

甘いものほどむし歯になりやすいと考えている人が多いのではないでしょうか。実は、虫歯になりやすいのは甘いものの食べ過ぎだけでなく、「おやつの回数」にも問題があります。もちろん、お菓子の量や内容は気をつけなくてはいけませんが、回数というのもむし歯の要因の一つとして気にしていきたいですね。

   おやつの回数

一般的におやつは1日200kcalが適量とされていますが、食べ過ぎやむし歯を防ぐために回数にも注意して食べることが大切です。その理由は、砂糖の量と摂取回数の増加がむし歯の原因につながってしまうから。予防のために、おやつは1回100kcalを目安に1日2回までを心がけましょう。また、最近ではお菓子などの加工食品の袋の裏側に栄養成分が表記されているものが多いので、このお菓子のエネルギーはどの程度あるのか、表示をよく見て選びましょう。

 まとめ

いかがでしたか?成長期は子どもの体が大きく発育する時期なので、適切な食習慣を身につけていくことが重要です。また肥満や瘦せ型など、将来の健康に影響を及ぼすような健康課題もみられる時期でもあります。本日を機に食生活を振り返り、食事を味わって食べる、みんなで楽しく食べるなどの食育を通して食べる力を育んでいきましょう

【参考文献】
・日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/
kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
「栄養科学イラストレイテッド 応用栄養学」(栢下淳,上西一弘/編), 羊土社, 2014
・間食のエネルギー(カロリー)|e-ヘルスネット(厚生労働省):
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html
・甘味(砂糖)の適正摂取方法|e-ヘルスネット(厚生労働省):
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-012.html
・「食事バランスガイド」について:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
・厚生労働省:「食を通じた子どもの健全育成(ーいわゆる「食育」の視点からー)のあり方に関する検討会」報告書について
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/s0219-3.html

管理栄養士・ HITOOMOI

管理栄養士・ HITOOMOIフードコーディネーター・管理栄養士

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「ヒトオモイ=人想い」大切な人を想う気持ち。それがヒトオモイ。「ヒトオモイ=一思い」その気持ちを、ただ一つ思い続ける。それがヒトオモイ。
合同会社HITOOMOIは、大切な人のための、手作りの食事で「作る人・食べる人」お互いが大事にされていることを実感し生きててよかったと思える社会を創ることを目指しています。

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