沖縄県は、元気なお年寄りが多く、長寿県と言われています。しかし近年では、生活スタイルの変化、食の欧米化などにより、長寿の食文化が忘れかけています。今回のコラムでは、「沖縄県長寿3つの秘訣、なぜ野菜が必要なのか、食習慣で病気予防」などを解説します。
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沖縄長寿の食生活
沖縄県の長寿は、生活スタイルや食習慣、環境などが関係しています。現在は車社会による運動不足、食の欧米化などにより、長寿ランキングが下がっているのが現状です。
都道府県別にランキングされている「長寿ランキング」によると、沖縄県は、昭和60年男女共に1位でしたが、男性ランキングはその後低下し、平成27年36位/女性ランキングは昭和60年~平成17年1位→平成22年3位→平成27年7位と年々低下傾向にあります。(※1)
しかし、全国市町村別の女性平均寿命によると、1888市町村の中で、沖縄県北中城村が3回連続 長寿ランキング1位を継続しているのです。都道府県別の統計では低下傾向ですが、元気な高齢の方がたくさんいますね。
長年にわたり、元気な高齢者が多い理由は3つ考えられます。
1つ目:亜熱帯気候で育つ農作物の摂取
沖縄県は1年中温かく、亜熱帯気候で独自の環境にある島です。そのため、強い紫外線にも負けずに育つ野菜や果物には病気予防になるビタミンやミネラルが豊富に含まれているのが特徴です。さらに沖縄独自の食材(薬草、沖縄島野菜、もずくなど)がたくさんあるのです。
2つ目:医食同源のように食事が身体を作るという先人の教え
琉球王国時代から、「食は命の薬」という考えがあります。先人の知恵が言い伝えられ、体調によって薬草(フーチバー、長命草、イチョーバ)などを取り入れ、薬代わりの料理が食べられてきました。
3つ目:毎食野菜を食べていた食習慣
戦前の食生活(※2)は、米の代わりに蒸したサツマイモが主食。毎食、野菜たっぷり、魚中心の食事で、豚肉はお祝いやお正月などハレの日のごちそうとされていました。
米の代わりに摂取していたサツマイモの栄養価は、腸内環境を整える食物繊維、病気予防のビタミンCが豊富に含まれています。さらに、島野菜は有害物質を除去する抗酸化作用があるビタミン類が多く、魚や島豆腐は、良質なタンパク源で低脂肪。栄養面からみると、バランスよく摂取できています。
このように、独自の食文化などが長寿に繋がったと考えられます。さらに、元気に長生きするには、「野菜の摂取、バランスの良い食事内容」も大切なことがわかりますね。
なぜ、野菜が必要なのか 野菜の効果は??
沖縄の長寿の謎がわかったところですが、やはり野菜が大切ですね。「野菜が大切なことは、わかっているけどなぜ?」との声もよく聞くので、今回は野菜の必要性、野菜の効果を解説します。野菜に含まれる栄養素は、生活習慣病の予防になることがわかっています。高血圧予防のカリウム、糖尿病・動脈硬化・脂質異常症予防などの食物繊維、有害物質を除去する抗酸化ビタミンについてみてみましょう。
『このコラムでは、要点をまとめていますので、ご自身の気になる症状にあわせて、詳細は各コラムでご覧いただければと思います。』
カリウム×高血圧予防 ~2020年に変わった?!塩分の目標量~
カリウムは、ミネラルの一種で野菜や果物に多く含まれる栄養素。主な働きは、余分なナトリウム(塩分)を体外に排出し、血圧を正常に保つことから高血圧予防、筋肉の収縮を正常に保つ、体内の水分調節などがあります。
カリウムは水に溶けやすい性質なので、生野菜や、さっと茹でる、スープなどの調理がおすすめです。果物にも多く含まれていますが、果物の糖(果糖)は、余った分は中性脂肪に変わるので、過剰摂取せず、適度に取り入れましょう。
高血圧予防には塩分摂取量のコントロールが重要です。私達は、毎日どのくらい塩分を摂取しているのでしょうか。平成30年の国民健康・栄養調査(※3)によると、20歳以上の塩分摂取状況は、男性 11.0g、女性 9.3gでした。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」よると、1日の塩分の目標量は、以前より0.5g引き下げ、成人男性7.5g未満/成人女性6.5g未満、さらに高血圧・慢性腎臓病の予防のため6g未満とされました。(※4)
高血圧予防のポイントは、①麺類の汁は飲み干さない②外食や加工品、インスタント食品は塩分表示を確認する③野菜や果物を取り入れるなど身近なことから気を付けましょう。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、サイレントキラーともいわれます。気が付いたら動脈硬化を発症し脳卒中になったという方も増えています。高血圧と診断された場合は、放置せず、定期的な健康診断がおススメです。塩分に気を付けながら、野菜に含まれるカリウムを摂取して食事で予防していきましょう。
*コラム詳細は下記『食事で病気予防≪カリウム×高血圧予防≫』でご覧ください*
食物繊維×糖尿病などの予防
食物繊維は、栄養学的にみると炭水化物の一種で、「炭水化物-糖質=食物繊維」つまり炭水化物から糖質を除いたものが食物繊維です。この食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維、水に溶ける水溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は、腸内環境を整える、血糖値の急上昇を防ぐ、コレステロールの吸収を抑えるなどの働き、不溶性食物繊維は、腸内の有害物質を体外に排出、腸内の良い菌を増やす働きがあります。
食物繊維の働きの1つ、血糖値の急上昇を防ぐとは、どのような状態なのでしょうか。水溶性食物繊維は、栄養素を包み込み、小腸からの吸収をゆるやかにする作用があり、血糖値やインスリンの急上昇を防ぎます。
糖尿病とは、血糖値が高い状態です。血液中にブドウ糖が増えると膵臓からインスリンというホルモンの働きにより、ブドウ糖を体内にとり込み、血糖値を下げます。しかし、このインスリンの働きが低下していると、ブドウ糖を体内にとり込めなくなり、血糖値が高い状態が続きます。これが糖尿病です。さらに、健康診断で見つかりにくい「隠れ糖尿病」といわれる血糖スパイクが増えています。
血糖スパイクとは、糖質摂取後に、血糖値が急上昇し、その後急激に下がる状態です。この状態が続くと、血管を傷つけ動脈硬化のリスクや、糖尿病発症、がんや認知症の発症原因にもなることが考えられています。
糖尿病予防のポイントは、①野菜、きのこ、海藻などの惣菜を1品増やす②砂糖入り飲料、お菓子やデザートのだらだら食べはやめる③空腹時は炭水化物(糖質)のドカ食いは控え、野菜やたんぱく質(魚・肉・豆・卵)から食べる などできる事から取り入れましょう。
糖尿病疑いの方も放置せず、継続的な健康診断や治療をおススメします。
*コラム詳細は下記『食事で病気予防≪食物繊維×糖尿病など予防≫』でご覧ください*
ビタミン×病気予防や老化防止
ビタミンは、体内ではほとんど作ることができないので食事から摂取する必要があり、微量ですが生命に欠かせない栄養素です。水に溶ける水溶性ビタミンと、油脂に溶ける脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは、余分な分は排出されますが、脂溶性ビタミンは多く摂取しすぎると過剰症もあり毎日適量取り入れるのがおススメです。ビタミンのおもな働きは、それぞれ異なりますが、今回は病気予防になるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEについて解説します。
ビタミンA
ビタミンAは、脂溶性ビタミンの一種です。色の濃い野菜(緑黄色野菜)に含まれるβ―カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わります。主な働きは、目の健康を保つ、皮膚や粘膜を健康に保ち感染を防ぐ、抗酸化作用によりガンや動脈硬化の予防。多く含まれる食品は、人参・カボチャ・モロヘイヤ・ほうれん草・春菊・小松菜・レバー類・うなぎなど緑黄色野菜に含まれます。
ビタミンC
ビタミンCは、水溶性ビタミンの一種で、水に溶けやすい性質があり生野菜サラダやさっと茹でる調理法がおススメ。コラーゲンの合成を助ける、鉄の吸収を高める、ストレスに対抗するホルモンを作る、抗酸化作用により老化防止などの働きがあります。多く含まれる食品は、パプリカ・菜の花・ブロッコリー・ゴーヤー・柿・いちご・オレンジなど野菜や果物に含まれています。
ビタミンE
ビタミンEは、脂溶性ビタミンの一種で、体内では生体膜に存在します。皮膚や臓器が老化するのを防ぎ、動脈硬化予防、毛細血管を広げ血行不良を改善する働きもあります。多く含まれる食品は、モロヘイヤ・赤パプリカ・カボチャ・アーモンド・うなぎなど緑黄色野菜やナッツ類に含まれています。
また、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、抗酸化ビタミンとも呼ばれ、老化防止や病気予防に必要なビタミン類です。老化原因は、遺伝要因や体成分の酸化です。酸化とは、偏った食生活・アルコールの過剰摂取・ストレス・大気汚染・紫外線・タバコなどが原因で、体内に有害物質【活性酸素】がたまり細胞を傷つけ、老化や動脈硬化やガンの原因になることがわかっています。
体内の有害物質【活性酸素】を除去するには、抗酸化作用がある食品の摂取が有効。この抗酸化作用のあるビタミンがビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどに多く含まれています。
このように、野菜に含まれる栄養素は、病気予防や老化防止につながります。抗酸化作用のある野菜を毎日食べていた沖縄長寿の内容ともつながったのではないでしょうか。
*コラム詳細は下記『食事で病気予防≪ビタミン×病気予防や老化防止など≫』でご覧ください*
今回解説したカリウム、食物繊維、ビタミンは色々な食品に含まれていますが、野菜類に多く含まれている栄養素です。毎日の食事に野菜を取り入れ健康的に過ごしましょう。
▼参照資料
(※1)厚生労働省 平成27年都道府県別平均寿命
(※2)社団法人農山漁村文化協会「聞き書 沖縄の食事」
(※3)厚生労働省 平成30年国民健康・栄養調査
(※4)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版
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