『アトピー性皮膚炎』と栄養アプローチ【栄養カウンセリング事例・薬剤師コラム】

アトピー性皮膚炎とはアレルギー性疾患の一つで、罹患率は、日本だけではなく世界中でも増加傾向にあります。様々な原因が関連していますが、一つの原因として食生活の欧米化があると考えられています。

栄養カウンセリングを日々お受けする中で、女性の体調に関して、食の悩みや栄養面の相談を寄せられます。その中でも、本コラムでは、『アトピー性皮膚炎』について栄養的アプローチとともにご紹介させていただきます。

 アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う慢性的な皮膚炎です。アトピー性皮膚炎の根本には、皮膚の乾燥とバリア機能の異常があり、様々な外的・内的の刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。

顔や首などの炎症が強いと、人の目が気になり自信をなくしてしまう方もいらっしゃいます。精神衛生障害のリスクも高く、体全身の皮膚が乾燥しフケが剥がれ落ちるような魚鱗癬(ぎょりんせん)や、喉のイガイガを伴う咳がでるアトピー咳嗽(がいそう)、目の網膜が剥がれて視力が低下する網膜剥離(もうまくはくり)などの合併症が発症することもあります。

 アトピー性皮膚炎の定義

・アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す
・瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患である
・患者の多くは「アトピー素因」をもつ

「アトピー素因」とは

 ①家族歴・既往歴
  <以下のいずれか、あるいは複数の疾患>
  ✅気管支喘息、✅アレルギー性鼻炎、✅結膜炎、✅アトピー性皮膚炎
 ②IgE抗体を産生しやすい素因


引用:2018年アトピー性皮膚炎診療ガイドラインより

IgE抗体とは、アレルギーの原因物質が侵入してくると排除するために必要な体内で産生されるタンパク質ですが、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、本来そこまで有害ではないもの(ダニや食物)に、必要以上に過剰に反応して、IgE抗体がたくさん産生されます。

IgE抗体が、過剰に産生されると、体内でかゆみを発生させる物質が発生するため、その物質が自分自身の体を傷つけてしまう原因になります。

 栄養療法におけるアプローチ
   ×症状が強いときになるべく避けたい食材×

アトピー症状が強いときになるべく避けたい食材としては、『トランス脂肪酸』、『オメガ6脂肪酸』、『飽和脂肪酸、動物性たんぱく質』があげられます。詳しくご説明いたします。

トランス脂肪酸

原材料表示:マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング

トランス脂肪酸』は、人工的に合成された油で、安価でサクサク感、コク、しっとり感を出します。自然界には存在しない油のため、人間の体が異物として反応しやすく、炎症の原因となってしまうことがあります。

アメリカのFDA(食品医薬品局)では、心筋梗塞などの冠動脈疾患、肥満、アレルギー性疾患等の原因になる観点から、2018年6月から全面使用が禁止されています。

お菓子や菓子パンなどを買うとき原材料表示に上記が入っていないか確認することで避けることができます。

オメガ6脂肪酸

含まれている食材:紅花油、大豆油、外食の油、コンビニやスーパーなどのお惣菜など

オメガ6脂肪酸』は、必須脂肪酸で、体内では合成できない油ですが、外食やスーパーのお惣菜などに使用されており、現代人では摂取過多が指摘されています。

コレステロールを下げる側面もあると言われていますが、炎症を邪気させる油の種類であるため、摂り過ぎ注意の油です。

飽和脂肪酸、動物性たんぱく質

含まている食材:肉、乳製品など

飽和脂肪酸、動物性たんぱく質』は、悪玉菌のえさになり、腸内環境を乱しやすい食材とされています。

体内では、免疫が過剰に反応しないように、制御性T細胞という免疫系の細胞がはたらき、免疫系のバランスをとっています。
制御性T細胞は、善玉菌が優位な腸内環境下で、増加することがわかっており、腸内環境が悪化することで、免疫バランスが破綻し、アレルギーなどの炎症の原因なってしまいます。


   ○積極的に摂りたい栄養素・食材〇

アトピー症状をやわらげるために積極的に摂りたい栄養素としては、『亜鉛』、『ビタミンA』、『ビタミンD』、『オメガ3脂肪酸』、『食物繊維』があげられます。栄養素を豊富に含む食材とともに詳しくご説明いたします。

亜鉛

含まれている食材:牡蠣、豚レバー、カシューナッツなど

亜鉛』は、新しい細胞をつくるときに必須となる栄養素です。

アトピー性皮膚炎の場合、上皮細胞をつくる機能が低下してしまうため、皮膚がカサカサしてふけのようになったり、乾燥して脆弱になったりしてしまいます。
亜鉛をしっかり補充することで、上皮細胞の機能低下を改善することができます。

ビタミンA

含まれている食材:レバー類、卵黄、モロヘイヤ、人参など

ビタミンA』は、皮膚の弾力成分であるコラーゲンやエラスチンの生成にかかわっています。

また、皮膚のバリア機能を高め、正常化するはたらきもあるため、潤いがなく、かさかさした皮膚炎を起こしているときには積極的に摂りたい栄養素になります。

ビタミンD

含まれている食材:いわし、鮭、ししゃも、かつおなど

ビタミンD』は、腸活のビタミンとも言われ、腸の粘膜の細胞同士を強固に繋ぎとめておくために必要な栄養素です。

細胞同士の繋がりが弱いと、細胞と細胞の隙間からアレルゲン物質が、血中にどんどん侵入してきてしまうため、ビタミンDをしっかり摂取し、アレルゲン物質をなるべく体内に入れない腸内環境つくりが大切です。

オメガ3脂肪酸

含まれている食材:えごま油、アマニ油、青魚類など

オメガ3脂肪酸』は、炎症を抑える働きがあります。

オメガ6脂肪酸や飽和脂肪酸などの油は、炎症を促進し、皮膚や血管の細胞膜をもろくしてしまうためアトピー性皮膚炎を悪化させてしまうのに対して、オメガ3脂肪酸は体内で逆の働きをします。
外食やお惣菜での食事が続いているときこそ、家では積極的にオメガ3脂肪酸を摂取し、炎症を防ぎましょう。

食物繊維

含まれている食材:きのこ類、海藻類、根菜野菜など

食物繊維』は、摂取することで善玉菌が活性化し、腸内環境が良好な状態になります。

腸内環境が良好であると、免疫機能が正常に働くため、アレルギー反応がでにくくなります。

 終わりに

アトピー性皮膚炎での病院の最初の治療は、外用薬(塗り薬)での治療になりますが、栄養を意識することで身体の内側からしっかりケアし、根本的に治療することも可能な疾患です。

控えたい食材、積極的に摂りたい食材をご紹介しましたが、食べてはいけないものは一つもありません。

いろいろ気にしすぎてしまい、“ストレス”に感じることが体にとって一番よくないことです。

アトピーなどの炎症があり、控えたい食材を摂ってしまったときには罪悪感を感じてしまうのではなく、次の食事で積極的に摂りたい食材を増やすなど工夫し、どんな食材でも心から「食べること」を楽しみましょう。


その他、栄養カウンセリングをしていると『乾燥肌』に関する相談も多く寄せられます。以下コラムでは、「乾燥肌の予防と対策」および冬に乾燥した肌を内側から潤し、シミを予防するための「栄養素」についてご説明しています。乾燥肌に悩まれている方は、ご参考ください。

アトピー性皮膚炎に悩まれている方には、腸の状態が原因の方もおられます。以下コラムでは、『便秘』と「便秘を解消する栄養素と豊富に含む食材」「便秘を解消するための生活習慣についてご説明しています。便秘に悩まれている方は、こちらもご参考ください。

薬剤師-栄養カウンセラー・冨尾ありささん

薬剤師-栄養カウンセラー・冨尾ありささん(一社)インナービューティープランナ-

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薬剤師の経験と栄養の知識を通じて「共働きのお母さんの幸せを叶える」ことをミッションに活動。
薬学と栄養学で顧客の美容・健康計画を叶えるだけでなく、調和のとれた豊かな暮らしをサポートする起業支援に従事。単なる起業支援ではなく、「魅力的に年を重ねるライフスタイル」をトータルサポートしている。
フルタイム勤務しながらフリーの仕事である料理教室・栄養セミナー受講者は1年で600人、カウンセリング薬局のべ5000人

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