春の訪れを感じるイースター(復活祭)の食卓と楽しみ方【料理/食文化研究家コラム】

 イースターとは?

今年もまもなく『イースター』と呼ばれるイベントがやって来ます。

最近、時たま耳にするようになったこのイースター。日本では『復活祭』と呼ばれることが多いのですが、聞いたことはあっても詳しい中身まではあまりよく知らないという方も少なくないかもしれません。

主にキリスト教圏を中心に、この時期に盛んに祝われるこのイースターは、ひと言で言うとイエス・キリストの「復活」を祝うお祭りです。それと同時に、長い冬が終わり、ようやく暖かな春が訪れたことを皆で共に分かち合う、喜びにあふれた季節行事でもあります。

 イースターを彩るさまざまなモチーフ

そんなイースターのシンボルといえば、なんといってもウサギ。日本でも、イースターエッグイースターバニーとして知られていますね。そのほかには、ニワトリヒヨコヒツジハトなどもよく見かけるモチーフです。

じつはこうしたモチーフには、ひとつひとつに込められた特別な意味というのがあります。

たとえば、「神の小羊」という言葉や、「平和の象徴としてのハト」に代表されるような、キリスト教的な意味合いを含むもの。

あるいは、ヨーロッパでの古くからの生活の営みに深く根ざした、「多産」や「豊穣」を象徴するウサギ「生命」や「再生」を象徴するニワトリやヒヨコなどがそうです。

木々の葉が落ちて、大地が灰色や茶色に染まっていた季節が終わり、ようやく世界が色づき始める春。イエス・キリストの「復活」という、キリスト教圏最大の祝祭のムードは、新たな命の誕生や、木々の芽吹きと共に、世界を喜びの色に変えながら春の訪れを知らせます

 イースターの食卓

明るいパステルカラーのテーブルウェアに食器、さまざまな可愛らしい動物や卵のモチーフ。そんな目にも楽しいイースターの時期の食卓は、一年の中でも特に皆が楽しみにしているものです。

特に料理に関していえば、この日は、皆が久々にごちそう気分を思い切り楽しめる機会でもあります。

というのもキリスト教の暦では、このイースターより前の期間(「四旬節」と呼ばれます)は、十字架に架けられたイエス・キリストの死に想いを馳せる時期とされており、基本的には賑やかな宴会の場を設けたり、ごちそうを思い切り味わったりすることを避けるべきだと考えられているからです。

つまりイースターの時期の食事というのは、そんな節制の期間が終わった後に迎える初めてのお祝いの食卓。そこには先ほどの卵やウサギ、ヒツジなどの象徴的な食べ物のほかに、肉類全般、チーズをはじめとする乳製品などをふんだんに使った料理が並びます。

たとえば、生地とフィリングにバターやチーズをたっぷり使い、中には茹で卵を入れて焼き上げたごちそう感満載のキッシュ

[イースターのキッシュ Photo by Niwano Momo] 

同じくゆで卵を入れたミートローフのようなものも、イースターらしくてとても人気があります。

[ゆで卵入りミートローフ Photo by Niwano Momo] 

また、それほど手の込んだお料理でなくとも、ゆで卵に具材やスパイスなどをトッピングしたデビルドエッグや、ハーブや香辛料をまぶしてシンプルに焼き上げたラム肉のローストなども、イースターの時期には定番のメニューですね。

そしてもちろん、イースターはイエス・キリストの「復活」を祝うお祭り。ですから、十字架やハトをかたどったお菓子や菓子パンなども、この時期の食卓によく並びます。

 イースターの楽しみかた

もともとは宗教行事であるイースターですが、春の訪れを祝うお祭りでもあると考えれば、私たち日本人にもさまざまな楽しみかたができそうです。

いつもの食卓に、卵や羊肉を使った料理を加えてみたり、卵やウサギ型のチョコレートや、春らしいパステルカラーのテーブルコーディネートをあしらってみたり。あるいはエディブルフラワーのような花々や、フレッシュグリーンが美しいハーブ類などをそっと添えてみるのも春らしくて素敵ですよね。

それ以外では、自分で卵の殻に色を塗ってイースターエッグを作ってみるのも楽しいものです。
子どもたちと一緒に楽しめる、エッグハントもおすすめ。イースターでは定番の、卵をあちらこちらに隠して探し出す遊びのことです。わざわざ自作しなくても、今ではこの時期になるとさまざまなお店でイースター関連のグッズが売られていますから、たとえば卵の形のチョコレートやオーナメントなどを隠して探すゲームをするのも手軽で楽しいですよ。

 今年のイースターはいつ?

クリスマスとは違い、同じキリスト教関連の行事でも、イースターは毎年決まった日におこなわれるというものではありません。イースターは、「春分を過ぎて、最初の満月の日のあとの日曜日」と決まっているため、毎年だいたい3月下旬から4月下旬のあいだで日程が変動しているからです。

イースター:春分を過ぎて、最初の満月の日のあとの日曜日
⇒3月下旬から4月下旬の間

そしてさらに、イースターは特定の一日で終わる行事ではなく、ふつうは数日にわたっておこなわれます。

なかでもメインとなるのはやはり、イエス・キリストが「復活」した日、「復活祭の日曜日」。

2022年でいうと、4月17日(日)がその日にあたります。

ぜひ皆さんも、この日はほんの少しだけイースター本来の意味にも想いを馳せながら、素敵な春の一日をお過ごしいただけたら嬉しいです。もちろん、美味しいお料理が一緒にあれば、言うことなしですよね!


●参考文献:庭乃桃『おいしく世界史』柏書房、2017年


おすすめレシピ「ちょっぴり大人なたまごサンド♪」
料理/食文化研究家・庭乃桃さん

料理/食文化研究家・庭乃桃さんMeal Partner_Food Culture Researcher

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大学院でヨーロッパ地域の歴史・文化を専攻し、現地へ留学。
企業向けレシピの開発やスタイリング・撮影を手がけるほか、書籍・コラムの執筆や、翻訳、講演など多方面で活動中。

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